身体が思うように動かなくなってくる高齢者にとって、
小さな段差やドアの開閉は生活するうえでの大きな壁になる事があります。
特に、日々使用するトイレは小さな潜在リスクが大きなトラブルを招きかねません。
今回はトイレにスポットを当て、お年寄りのQOL(生活の質)を考えていきます。
1.なぜトイレに「引き戸」なのか
先々のことを考えると、トイレは引き戸にすることをおすすめします。
1-1.開くスペースを取らない引き戸
引き戸は横にスライドさせるだけなので、一般的な開き戸と比べると、
扉を開く際に場所を取らないというメリットがあります。
単純に、狭小住宅などで空間を有効活用するという意味でも、
引き戸というのは大変優れたものがあります。
また、出入りの際にトイレの前の廊下を歩いている家族に
扉をぶつけるなどの心配もないため、小さなお子様がいるご家庭にもよく選ばれています。
1-2.車いすや介護を想定すると引き戸が便利に
高齢社会の今、車いすや介護が必要になる事を想定して引き戸を選択する人が増えてきています。
トイレは廊下の途中や、階段の踊り場などに設置されていることが多いと思いますが、
その狭い通路の中で開き戸にしてしまうと、通路のほとんどを扉がふさいでしまうことになります。
若いときは何も気にならなかった開き戸も、歳を取ると、
開けるための移動距離が長くなることや車いすだと入りづらいといった不都合がおきます。
さらに、介護をしている人にとっても、
一度開けるためにトイレからちょっと離れたところで立ち止まり、
トイレの扉を開けてまた進んで…とひと手間も二手間も増えてしまうのです。
高齢者が住む屋内の扉は、開閉が簡単でスペースを広くとれる引き戸がとても便利でおすすめです。
1-3.引き戸は開けっぱなしにしておくことが出来る
シチュエーションとしては限られてはきますが、
介護の現場や小さなお子様のトイレトレーニングの時など、
ドアを開放しておくは必要がある場面は意外とあるものです。
トイレに一人で座っている状態を保てないときの介護の時や、
トイレに座らせてあげた後に見守っておく必要がある場合などでも、
臨機応変に扉を開けっぱなしにしておくことが出来るのが
引き戸の大きなメリットといえるでしょう。
開き戸でも開けっ放しにしようと思えばできますが、
どうしても扉が邪魔になるので周りに気を遣わねばなりません。
そういった点を考えると、トイレの引き戸は大変重要な役割を秘めています。
1-4.一方で…トイレを引き戸にするデメリットも
トイレを引き戸にすることはメリットばかりというわけでもありません。
引き戸は、開き戸に比べるとどうしても気密性が低くなります。
そのため、空気の流れや音もれの面での心配が残るといえます。
また、扉を閉めたときに指を挟むなどのリスクも考えられます。
小さなお子様や、反応が少し鈍くなってしまったお年寄りの場合、
閉まる扉に反応しきれず指を挟んでしまうこともあるかもしれません。
しかしながら、今時の引き戸はには勢いよく閉めても
閉まる直前にブレーキがかかり、ゆっくりと閉まるものがあります。
そういった商品を選ぶこで不安を解消できるでしょう。
2.老後のQOL面を考慮した家づくり
トイレ一つでも、老後のQOLの度合いは大きく変わります。
老後はゆったりと暮らしたい、とリビングを広く取ったり
趣味の部屋を作ったりするのもいいですが、
家族全員が必ず、そしてずっと使うことになるトイレには特に配慮が必要です。
2-1.安心して一人でトイレや風呂を使えるようにしておくことが重要
「まだ私は(親は)健康だし、一人で大丈夫だから…」
そう思っている方も多いのではないでしょうか?
しかし、相応の年齢になってくるとちょっとした段差に躓いたり、
トイレの開き戸の開閉による移動が辛く感じるようになったりすると
暮らしの中で起きる日々の小さなストレスになります。
毎日のことですから、1回あたりは小さなストレスでも、
次第にそれが積み重なると大きな気苦労になりかねません。
また、ちょっとした段差に躓いて転んでしまった場合、
お年寄りの場合は骨も弱くなっていることが多く、
骨折をしてしまうという事例も少なくありません。
それがきっかけで介護状態になってしまうケースもありますので、
今現在介護が必要でなくても、お年寄りが安心して
一人でトイレを使えるように今から準備しておくことが大切なのです。
2-2.開口部が大きくとれる引き戸ならサポートがしやすい
万が一、介護が必要になった場合でも、開口部が広く、
移動距離が少なくて済む引き戸であれば、
サポートをする人にとってもお年寄りにとっても楽です。
開口部が大きい分、横に並んで肩を抱えてあげて進んでいくこともできますし、
一度中に入った後に何かの用事で外に出るときにも、
扉で大人二人がすれ違うこともできます。
車いす生活になったときでも、開口部が広ければ
車いすのままトイレに行くことが出来るため、
わざわざ立って歩いてもらう必要もなくなり、
トイレの中で車いすから便器に乗り移るというワンステップで済みます。
お年寄りにとってもサポートする側にとってもとても楽なのです。
2-3.デザイン豊富なおしゃれな引き戸
引き戸といえば、ちょっと昔の日本の玄関の扉というイメージを
お持ちの方もいるかもしれませんが、実はそうではありません。
現代では引き戸を採用する家庭が多くなってきている分、
各メーカーも引き戸のデザインや機能に力を入れています。
そのため、家の雰囲気に合ったデザインの引き戸や、
ポイントになるようなおしゃれな引き戸など様々に展開されています。
家にこだわりがある人でも納得のデザインのものが見つかると思います。
一度、パンフレットなどチェックしてみるのもオススメです。
最後に
介護や車いすでの生活を想定し、トイレの扉を引き戸にしておくということには
大きなメリットがあるということをご理解いただけたでしょうか。
公衆トイレの車いす用の個室を想像してもらえばわかるように、
介護が必要な場合や車いす生活の場合には、引き戸での生活が大変便利なのです。
出来るだけストレスフリーの状態で、老後のQOLが向上するように今から検討してみてください。

